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2025.07.12 SAT

【Google Workspace】複数ドメインを運用する完全ガイド

GoogleWorkspace
複数ドメイン運用
2025.07.12 SAT

「すでにGoogle Workspaceを契約して@abc.comというドメインでメールを使っているけど、新しく始めた事業の@def.comというドメインも、同じアカウントで管理したい…」

「でも、追加でライセンス料を払うのは避けたい。何かいい方法はないだろうか?」

この記事は、そんなお悩みを持つ、Google Workspaceユーザーの皆様に向けた、いわば「集大成ガイド」です。

私自身が実際に設定でつまずき、試行錯誤を重ねて解決した全記録を、専門用語を極力避けながら、誰でも同じように設定を完了できるよう、一つ一つ丁寧に解説していきます。「ドメインエイリアス」という機能を使えば、追加費用なしでこの課題を解決できます。

第1章:【知識編】あなたの目的はどっち?「ドメインエイリアス」と「セカンダリドメイン」

まず、Google Workspaceで複数ドメインを扱うには、2つの全く異なる方法があることを理解する必要があります。どちらを選ぶかで、できることやコストが大きく変わるため、あなたの目的に合った方法を選ぶことが最初の重要なステップです。

すべてはここから始まる!2つの方法の決定的な違い

比較項目① ドメインエイリアス (今回使う方法)② セカンダリドメイン
一言でいうとユーザーの「別名」「ニックネーム」全く「別の会社」「別の部門」
メールアドレスtaro@abc.com と taro@def.com は

同一人物の同じメールボックスに届く。
taro@abc.com と taro@def.com は

別人として別々のメールボックスを作成できる。
追加コスト無料ユーザーライセンス分の追加料金が必要
主な用途・会社名変更やドメイン移行期間

・複数のブランド名を同じ部署で受けたい

・コストをかけずに複数ドメインのメールを1つのアカウントで受けたい
・複数の会社や事業を運営している

・部門ごとにドメインを完全に分けたい
ログインメインのドメイン(@abc.com)でしかログインできないそれぞれのドメインでログインできる

「ドメインエイリアス」はこんな時に使う!

ドメインエイリアスは、一人の人間が複数の名刺を持っているようなものです。taro@abc.comという名前の山田太郎さんが、taro@def.comという名前の名刺も持つイメージです。どちらの名刺を渡しても、連絡先は同じ山田太郎さんですよね。

具体的な活用シーン:

  • 会社のドメインを変更した時: しばらくの間、古いドメイン宛のメールも新しいドメイン宛のメールも、すべて同じ場所で受け取りたい。
  • サービスごとに窓口を分けたい時: サービスAの問い合わせ(support@service-a.com)も、サービスBの問い合わせ(support@service-b.com)も、同じサポートチームで対応したい。
  • 今回の目的: とにかくコストをかけずに、新しいドメインのメールを今使っているGoogle Workspaceのアカウントで受け取りたい。

「セカンダリドメイン」はこんな時に使う!

セカンダリドメインは、一つのオフィスビル(Google Workspace契約)の中に、完全に別の会社(新しいドメイン)が入居するようなものです。ABC社とDEF社は、同じビルに入っていますが、それぞれ独立した会社であり、従業員も別々です。

具体的な活用シーン:

  • グループ会社を運営している: 親会社(@abc.com)と子会社(@def.com)のメールシステムを、一つの管理画面でまとめて管理したい。
  • 事業部ごとに完全に独立させたい: IT事業部のメール(@abc-it.com)と、飲食事業部のメール(@abc-food.com)で、ユーザーも管理も完全に分けたい。
  • ユーザーを追加するごとに料金が発生する: DEF社の従業員を追加する場合、その人数分のライセンス費用(月額料金)が新たにかかります。

今回は、追加費用のかからない「ドメインエイリアス」の設定方法を、つまずきやすいポイントを含めて徹底的に解説します。

第2章:【実践編】ドメインエイリアスの設定手順と「ハマりポイント」

ここからは、実際の管理者向けの設定手順です。専門用語がいくつか出てきますが、一つ一つ解説するのでご安心ください。

  1. Google管理コンソールにログインし、「アカウント」→「ドメイン」→「ドメインの管理」へ進みます。
  2. 「ドメインを追加」をクリックし、新しいドメイン名(例: def.com)を入力後、「ユーザー エイリアス ドメイン」を選択します。
  3. 【ハマりポイント①】ドメイン所有権の確認(TXTレコード) Googleから「このドメインは本当にあなたのものですか?」と尋ねられます。証明のために、指定されたTXTレコードをDNS設定に追加する必要があります。ここで多くの人がつまずきます。
    • DNSとは?: 「ドメインネームシステム」の略。インターネット上の住所録のようなもので、google.comのようなドメイン名を、コンピューターが理解できるIPアドレスに変換する役割を担っています。今回はこの住所録に「このドメインの持ち主は私です」という証明書を書き込みます。
    DNS設定画面で、ホスト名(名前) という項目に何を入力すればいいか迷います。 [スクリーンショット 2025-06-26 15.46.07.png のイメージ]
    • 失敗する例: ホスト名にドメイン名(def.com)を入力してしまう。 →DNSサービスが自動でドメイン名を追加するため、def.com.def.comのようになり認証に失敗します。
    • 正解: ホスト名の欄は「空欄」にする。 →「空欄」にすることで、ドメインそのもの(ルートドメイン)を指定したことになり、正しく認証されます。@を入力してエラーになる場合も、まずは「空欄」を試すのが正解です。
  4. 所有権が確認できたら、「Gmailを有効にする」ボタンが表示されます。これをクリックします。
  5. 【ハマりポイント②】メールの配送設定(MXレコード) 次に「メールの配送先をGoogleに向けてください」と指示されます。これもDNS設定で行います。
    • MXレコードとは?: 「Mail Exchanger」の略。そのドメイン宛のメールを、どのメールサーバーに届けるべきかを指定する「配送先住所」です。これをGoogleに向けることで、Gmailでメールが受信できるようになります。
    ここで、Googleから指示されるレコードが1つだったり5つだったりして混乱します。
    • 1つだけ表示された場合(新しいパターン): [スクリーンショット 2025-06-26 16.06.20.jpg のイメージ] SMTP.GOOGLE.COM のように1つだけ表示されたら、それを設定するのが正解です。Google側が設定を簡単にしてくれている最新の方式です。
    • 5つ表示された場合(従来のパターン): ASPMX.L.GOOGLE.COM など、優先度が異なる5つのレコードが表示されたら、その5つすべてを設定します。
    どちらのパターンでも、レンタルサーバー側のDNS設定画面で、既存のMXレコードを一度すべて削除してから、Googleに指示された新しいレコードを追加するのが重要なポイントです。

第3章:【最重要】迷惑メール判定を回避する「SPFレコード」設定

さて、ここまでの設定でメールの送受信はできるようになりました。しかし、このままだと、あなたの大切なメールが相手の迷惑メールフォルダに直行してしまう危険性があります。

特に、「ドメインはGoogle Workspaceで運用し、WordPressからのお知らせメールはレンタルサーバーから送信する」といった構成の場合、この設定は必須です。

なぜ設定が必要?「なりすましメール」と判断される恐怖

  • SPFレコードとは?: 「Sender Policy Framework」の略。ドメインのDNSに「私のドメイン(@def.com)からメールを送ることを許可しているのは、これらのサーバーだけです」という公式な送信元サーバーの許可リストを登録しておく仕組みです。いわば、メールの送信元を証明する「身分証明書」のようなものです。

受信側のメールサーバーは、@def.com からメールが届くと、この「許可リスト(SPFレコード)」を確認します。

もし、WordPressが使っているレンタルサーバーがリストに載っていなければ、「許可されていないサーバーから送られてきた!これは”なりすまし”だ!」と判断され、迷惑メールになってしまうのです。

この設定は、あなた自身のドメインが悪用されるのを防ぐためにも、非常に重要な役割を果たします。

解決策は「許可証」の更新!SPFレコードの仕組み

解決策は、この許可リストに「Google Workspace」と「レンタルサーバー」の両方を載せることです。

SPFレコードは1つのドメインに1つしか登録できないため、既存のレコードを編集します。

  1. 既存のSPFレコードを探す ドメインのDNS設定画面で、v=spf1から始まるTXTレコードを探します。 [スクリーンショット 2025-06-26 16.29.15.jpg のイメージ]
  2. 既存のレコードを編集する 絶対に新しいレコードを追加してはいけません。既存のレコードに、Google Workspaceからの送信を許可する魔法の言葉 include:_spf.google.com を追記します。
変更前

(Xserverの例)
v=spf1 +a:svXXXX.xserver.jp +a:def.com +mx include:spf.sender.xserver.jp ~all
変更後

(コピー用)
v=spf1 +a:svXXXX.xserver.jp +a:def.com +mx include:spf.sender.xserver.jp include:_spf.google.com ~all

このように、末尾の~allの直前に、半角スペースを空けて追記するだけです。この一行で、「このドメインからは、GoogleのサーバーとXserverの両方からメールが送られますよ」と宣言していることになります。

第4章:【最終仕上げ】各ユーザーがGmailからエイリアスで送信できるようにする

ここまでの設定は、すべて「管理者」が行う作業でした。ドメインの所有権を確認し、メールが正しくGoogleに届くようにする、いわば「郵便受け」の設置工事です。

しかし、このままではまだ、新しいドメイン(@def.com)からメールを送信することができません。最後の仕上げとして、メールを使う各スタッフが、自身のGmailで簡単な設定を行う必要があります。

なぜこの「最後のひと手間」が必要なのか?

  • 管理者の設定: def.com宛のメールを、各ユーザーのメールボックスに届けるようにする設定。
  • 各ユーザーの設定: 自分のメールボックスから、def.comの差出人名でメールを送れるようにする「名刺」を用意する設定。

この「差出人用の名刺」を用意しないと、Gmailはどの名前でメールを送っていいか分からず、差出人リストに表示してくれないのです。

【重要】無料Gmailとの決定的な違いと、その理由

ここで、以前に無料Gmailで独自ドメインを設定しようとしたことがある方は、ある違いに気づくはずです。それは、設定の圧倒的な手軽さです。

比較項目① Google Workspace (今回の方法)② 無料Gmailアカウント
設定の手間簡単!

名前とアドレスを入力するだけ。
面倒…

SMTPサーバー名、ポート番号、パスワードなどの入力が必要。
認証作業不要必要(メールサーバーの本人確認がある)
セキュリティより安全

パスワードなどをGmailに保存しない。
標準的

パスワードをGmailに保存する必要がある。

なぜこんなに違うのでしょうか?

その理由は「信頼関係」にあります。

無料Gmailにとって、あなたの独自ドメインのメールサーバーは、全くの「他人」です。そのため、「本当にあなたはそのメールサーバーの正当な利用者ですか?」と確認するために、パスワードなどを入力させて本人確認を行う必要があります。

一方、Google Workspaceのドメインエイリアスの場合、あなたは管理者として、すでにGoogleに対して「@def.comというドメインは、私(の組織)のものです」という身元証明を完了させています(TXTレコードやMXレコードの設定がそれです)。

つまり、Google Workspaceはすでに@def.comというドメインは、うちの管理下にある信頼できる身内です」と完全に認識しています。そのため、その組織のユーザーが差出人として追加する際には、もはや他人ではないので、いちいちパスワードなどを確認する必要がない、というわけです。

この手軽さとセキュリティの高さこそ、Google Workspaceを利用する隠れた大きなメリットなのです。

【ユーザー向け】Gmailへの送信アドレス追加手順

この作業は管理者ではなく、メールを利用する各スタッフが自身のPCで行います。

  1. Gmailの設定画面を開く PCでGmailにログインし、画面右上の歯車アイコン(⚙️)から「すべての設定を表示」をクリックします。
  2. 「アカウントとインポート」タブを選ぶ 設定画面の上部メニューから「アカウントとインポート」をクリックします。
  3. 「他のメールアドレスを追加」をクリック 「名前」というセクション(「送受信可能なメールアドレス」と表示されることもあります)にある、「他のメールアドレスを追加」という青い文字のリンクをクリックします。 [スクリーンショット 2025-06-26 16.47.53.jpg のイメージ]
  4. 名前とエイリアスアドレスを入力 ポップアップが表示されたら、相手に表示させたい名前と、新しく追加したドメインエイリアスのメールアドレス(例: taro@def.com)を入力します。 「エイリアスとして扱います。」には必ずチェックを入れてください。
  5. 設定完了! ドメインエイリアスの場合、これだけで設定は完了です。確認メールなども届きません。

この設定後、メール作成画面を開くと、「差出人」のプルダウンメニューに、新しく追加したアドレスが表示されるようになります。

[スクリーンショット 2025-06-26 16.48.41.png のイメージ]

これで、すべての設定が完了し、新しいドメインを自在に使いこなせるようになります。

最終章:これであなたもドメインマスター

一見複雑に見えるドメインとメールの設定ですが、一つ一つの「なぜそうするのか」を理解し、つまずきやすいポイントを事前に知っておけば、必ず乗り越えられます。特に、所有権確認の「ホスト名」、迷惑メール対策の「SPFレコード」、そして最後の仕上げである「送信アドレスの追加」は、多くの人がつまずくポイントですが、この記事を読んだあなたならもう大丈夫です。

この設定一つで、ビジネスの信頼性も、日々の業務効率も大きく向上します。この記事が、同じように困っている誰かの一助となれば幸いです。

■参照URL

この記事を作成するにあたり、以下の情報を参考にしています。

北海道紋別市出身。旭川・富良野を経て2025年5月に故郷へ。金融・デザイン・Web・不動産の多様な経験を活かし、個人事業でホームページ制作やAI活用支援を提供。宅建士資格保有。地方でのデジタル活用と地域貢献をテーマに活動中。